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サクリファイス

2010年02月13日(土)

今日は、病後の復帰と考えていたが、生憎の雨模様。


サクリファイス

昨日、「サクリファイス 近藤 史恵 著 新潮文庫」
という本を買ってきた。
いつも、本が欠かせない米治郎だが、久しぶりに
ほとんど寝ないで、一晩で読了した。

米治郎の推薦度 ☆☆☆☆

新潮文庫の新刊コーナーで、自転車レースの写真の
表紙の本が気になった。近藤史恵(こんどうふみえ)さん、
たいへん失礼だが、初めて聞く名前だ。
”第5回本屋大賞第2位”、”大藪春彦賞受賞作”とオビに書いてある。
さらに、”自転車ロードレース×青春×サスペンス”とある。
これは、読まないわけにはいかないでしょう。

主人公の白石誓(ちかう)は、高校時代、オリンピックも期待される
陸上の中距離ランナーだった。そして、幼馴染の香乃という彼女がいた。
彼女の「私のために勝って」という言葉のために走り、勝ち続けた。
しかし、1番でいることに疲れ、彼女にもふられる。

たまたまテレビで目にした向日葵畑を行く自転車レース、
そこで、トップを行く二人の選手、前を行く青いジャージの選手と
ぴったりとつく黒いジャージの選手、
青いジャージの選手は明らかに疲れている、しかし、残り500mで、
黒い選手が青い選手に並び、握手して、
疲れているはずの青い選手が飛び出し、そのままゴールへ飛び込んだ。
テレビを見ていた誓は、八百長だと思ったが、後でこれが、
”エース”と”アシスト”だということを知る。
黒いジャージの選手は、他チームのアシストで、
青いジャージの選手とトップも交代せずに、青い選手を揺さぶるために
後ろへつき、ゴール手前で、青い選手に敬意を示し、握手して下がったのだ。
陸上選手として、勝たなければいけないという肩に重みを感じていた誓は、
これだと思う。陸上選手への道を捨て、大学で自転車部に入り、プロの道へ進む。

誓は、”チーム・オッジ”、という自転車ロードレースのプロチームにスカウトされる。
”チーム・オッジ”は自転車メーカーの大阪を拠点とするチームだ。
そこには、石尾豪というエースがいて、
彼には、若い次代のエース候補をわざと転倒させ、
再起不能にしたとされる黒い噂があった。

ノールさん、まさやん、何と何と、”暗峠”が出てくるよ。
主人公の誓が同じチームの同期のスプリンターの伊庭に誘われて、
休みの日に二人で上りに行く。誓は大学時代から何回か上っているが、
伊庭は初めてだ。

さて、その”暗峠”の描写をそのまま抜粋する。
「一般人は近くの人しかその地名を知らないだろう。
奈良と大阪の県境にある、自転車好きにとっては有名な峠である。
有名なのは、そこが恐ろしいほどの急勾配だからだ。」
さらに「一度足を付いてしまえば、もう二度と自転車に
乗って漕ぎ出すことはできないほどの急勾配。わずか二キロほどの
距離だが、最高勾配は二十五パーセントを超えると言われている。
普通の人ならば、自転車で上ろうとすら思わないだろうが、
世の中にはそんな坂を自転車で征服することに、喜びを感じる
人間だっているのだ。そして、ぼくも坂は決して嫌いではない。」
と、まあこんな具合である。

やがて、”ツール・ド・ジャポン”の6名の選手に、同期の伊庭とともに
選ばれる。誓が登りを得意とするクライマーに対して、
伊庭は、平坦、スプリントが得意な選手だった。
伊庭は、エース候補だが、誓はアシストだ。誓はアシストが好きだった。

自転車競技の選手の心理が主人公の誓を通して、克明に書かれている。
もうすでに、ハードカバーで読んでいる方もいらっしゃるかもしれないし、
さらには、コミックにもなっているらしいので、
そちらを読んでいる方もいらっしゃるかもしれない。
主人公の誓が語っていることであらわしているレースでの駆け引きや、
どう感じて走っているか、レースをやっている人は、
非常に参考になると思うし、それより何より興味深い。

エースの石尾の言葉、
「俺たちは一人で走っているんじゃないんだぞ。(中略)、
非情にアシストを使い捨て、彼らの思いや勝利への夢を喰らいながら、
俺たちは走っているんだ。(中略)、自らの勝利を汚すことは、
アシストたちの犠牲をも汚すことだ」

石尾のアシスト、赤城の言葉、
「やつは俺の誇りだったよ。汗みずくで必死にペダルを踏んで、
あいつを勝負所まで連れていく。俺のペダルを踏む力が
ちょうど限界になったとき、あいつは俺を置いて飛び出していくんだ。
まるで翼が生えたみたいな足で、楽々とさ。
その瞬間の爽快感といったら・・・」

何回も出てくる主人公のレース中の表現、
「ぼくは舌で唇を湿した」

”ツール・ド・ジャポン”の伊豆ステージ、何とリーダージャージを着ている
主人公、エースの石尾とトップ集団にいる。石尾の自転車にトラブル、
サポートのチームカーは別チームの3台後、石尾が止まる、誓の心理描写、
「一瞬、迷った。ぼくはどうすべきなのだろう。一緒に止まれば、
先頭集団から置いていかれてしまう。総合成績を守るためには、
ここで止まるべきではない。だが、アシストなら。アシストとして
働くなら、ここで一緒に止まり、彼をサポートして、先頭集団に戻すべきだ。
石尾さんと目があった。もし、ここで、彼が「行け」と言うのなら。
だが、彼はぐいっと指を自分のほうに曲げた。戻ってこいのサインだ。
ペダルから、シューズを外し、ぼくは地べたに足をついた。(中略)、
ロスした時間は四十秒ほど。だが、山岳でのこの四十秒は命取りだ。
先頭集団の姿は先の方に見えた。なんとしてもあそこまで追いつかなくては
ならない。少なくとも石尾さんだけでも。そう思った瞬間ふいに霧が晴れた。
思考がクリアになる。ぼくは、石尾さんの前に出た。シフトアップをし、
ペダルに力を込める。ぼくのゴールは、ゴールゲートではない。あの集団なのだ。
振り返って叫ぶ。「引きます。ついてきてください」石尾さんは頷いた。
(中略)、なぜだろう。ステージ優勝を決めた南信州よりも、
(筆者注:富士山の)タイムトライアルよりも爽快な気がした。
-お前はそういうのが好きなんだな。伊庭のことばが、ふいに頭に浮かぶ。
ぼくは汗みずくになりながら笑った。
そうだ、ぼくはずっとこんなふうに走りたかった。」

作者の近藤史恵さんは、ロードレーサーに乗っているわけでもなく、
自転車レースも見たこともなく、この小説を書いたという。

しかし、”大藪春彦賞受賞作”である。前半の自転車選手としての
克明な心理を描き、わかりづらい自転車レースというものを
読み進めるうちに、ものの見事に、自転車レースを知らない
読者にもわからせてしまう筆致力である。
そして、気がつくと、まさに、ミステリーな展開になってくる。

”サクリファイス”だ。

今日は、雨、たまには、家で読書でもどうだろう。
さあ、本屋に走ろう、そして、新潮文庫の新刊コーナーへ・・・。
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おはようございます

サクリファイス コミックで読みました。

R1@八王子さん(Re: おはようございます)

R1@八王子さん、ありがとうございます。

コミックで読まれましたか。
そりゃ、自転車ものですものね。
R1@八王子さんが読んでおられないわけがないと
思っていました(笑)。さすがに情報早いです。
プロフィール

高田米治郎

Author:高田米治郎
米治郎の道草日記

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